日本モンキーセンター 編
増補改訂版

霊長類図鑑サルを知ることはヒトを知ること

霊長類学へのいざない
ヒトも含めたサルのなかま、霊長類。
霊長類は、哺乳類の一グループとして多くの特徴を共有しつつ、驚くほどの多様化を遂げてきました。共通点をもちながら多様であり、多様な種のひとつとしてヒトがいます。つまり、霊長類を理解することは私たち自身を知ることにもつながるのです。
本書では、524種の現生霊長類のうち228種を紹介し、進化、生態、ヒトとのかかわりなど、さまざまな視点で解説をくわえました。日本モンキーセンターのスタッフが総力を挙げてお届けする「霊長類の世界」への入門書です。
編集スタッフが国内外での調査中にとらえた決定的瞬間、貴重な資料写真、とっておきの秘蔵写真も満載です。その一枚一枚に、「サルの世界」の謎を解く手がかりが潜んでいます。ゆっくり、じっくり、味わってください。

高野 智
公益財団法人日本モンキーセンター 学術部 エデュケーター


ヒトもサルのなかま

図鑑の見開きページ。左にマンドリル、右にゲラダヒヒやマングローブモンキーなどの写真が掲載されている。

もくじ

コモンリスザル

  • はじめに
  • 発刊によせて
    • あなたの「サルとは?」を探して…下村 実
    • モンキーセンターの誕生河合雅雄
    • 猿を詠んだ俳人たち尾池和夫
  • 巻頭グラビア
    • たべる/くつろぐ・ねむる/あそぶ・まねる・まなぶ/そだてる・そだつ

図鑑編
どこがちがう? なにがちがう? 524種のなかまたち

進化の系統樹にもとづく分類ごとに、個性的な228種のサルを収録。生息環境や食性、特異な生態をふんだんなカラー写真でくわしく紹介

  • 哺乳類のなかの霊長類
  • 霊長類の進化
  • 霊長類の分布
  • 霊長類の分類と名前
  • 霊長類を構成するグループの特徴
  • 図鑑のみかた
  • キツネザルのなかま
  • アイアイのなかま
  • ロリス、ガラゴのなかま
  • メガネザルのなかま
  • 広鼻猿❶ サキのなかま
  • 広鼻猿❷ クモザルのなかま
  • 広鼻猿❸ オマキザルのなかま
  • 広鼻猿❹ ヨザルのなかま
  • 広鼻猿❺ マーモセット、タマリンのなかま
  • オナガザル科❶ グエノンのなかま
  • オナガザル科❷ ヒヒ、マカクのなかま
  • オナガザル科❸ コロブスのなかま
  • テナガザルのなかま
  • 大型類人猿のなかま
チンパンジー

図解編
しらべてみよう! かたち・行動・社会・ヒトとのかかわり

多様な霊長類の表情、からだのしくみとうごき、認知、社会構造、コミュニケーションなどを、最新の研究情報をおりまぜて、霊長類の専門家たちがじっくり解説

  • 霊長類学の魅力
    • 「予想外」をまるごと受け入れるフィールドワーカーの幸福感伊谷原一
  • 霊長類の特徴
    • ①〈かたち〉と〈はたらき〉
    • ② 移動のしかたの多様性
    • ③ 歯のかたちと食べもの
    • ④ 顔・目・表情
    • ⑤ 手と足
    • ⑥ しっぽ
    • ⑦ おしり
    • ⑧ 遺伝子とゲノム
    • ⑨ 社会構造
    • ⑩ コミュニケーション
  • チンパンジーの特徴
    • ① 一日のすごしかた
    • ② 道具使用と文化
  • ニホンザルの特徴
    • ① 分布とくらし
    • ② 生活史、社会、食べもの
  • 霊長類とヒト
    • ① ヒトのくらしとのかかわり
    • ② 保全の取り組み
チンパンジー

日本モンキーセンターのやくわり

    • 日本モンキーセンターのおもな活動
    • 日本モンキーセンターのあゆみ

コラム

  • もっと知りたい!
    • テングザル長い鼻はなんのため?松田一希
    • テナガザル森に響く歌声打越万喜子
    • オランウータン「森の賢人」の魅力に惹かれて林 美里
  • 見る・聞く・語る サル学のすすめ
    • ❶ 骨を読む高野 智
    • ❷ 霊長類の食べものと味覚の進化早川卓志
    • ❸ 動物園でサルを観る綿貫宏史朗
    • ❹ 動物園を学びの場にするために赤見理恵
    • ❺ ボノボと人の距離感を考える新宅勇太
  • 霊長類 全種リスト
  • 索引
  • 主要参考文献
  • おわりに
    • 動物園は自然への窓伊谷原一

ようこそ! 多様な霊長類の世界へ

湯本貴和
公益財団法人日本モンキーセンター 所長

公益財団法人日本モンキーセンター(JMC)は、2026年に創立70周年を迎えます。私が大学で植物学を学び始めたときには想像もできなかったのですが、京都大学霊長類研究所所長につづいてJMC所長を務めることになりました。過去には日本の森林生態学の創始者で、里山概念を普及された四手井綱英先生も歴代所長として名前を連ねておられます。植物生態学者として、生態系の一員としての霊長類を見るまなざしをJMCに活かしたいと思います。

JMCは、1956年10月17日に名古屋鉄道のお力添えで設立された霊長類学の拠点であり、世界でも例のないサル類専門の動物園です。当時は物資調達にもこと欠き、いまのように海外調査が簡単な時代ではなかったとうかがっています。そのなかでJMCは、アフリカ類人猿や南米新世界ザルの研究に学術調査隊を派遣し、日本霊長類学の礎をつくりあげました。また、ニホンザルやオナガザルのなかまはもちろんのこと、キンシコウやアカウアカリなど希少な霊長類の生きた姿を展示し、多様な霊長類の世界を示す役割も果たしてまいりました。

2014年4月1日には公益財団法人として体制を新たにしたことを記念して『霊長類図鑑』(2018年、日本モンキーセンター編)が発刊されました。図鑑として181種の霊長類たちの姿をご紹介するだけではなく、そのうごき、からだのしくみ、認知、社会構造、コミュニケーションなど、最新の研究成果にもとづいて解説した、気軽に手にとっていただける画期的な本だったと自負しております。今回の増補改訂版では、図鑑編として228種まで種数を増やし、旧版では収録できなかったサルもご紹介できるようになりました。

霊長類の最大の特徴は、その社会性にあります。一部の夜行性のサルを除いて、ほとんどの霊長類は単独ではなく、群れで生活しています。JMCでは、野生下で群れで生活する霊長類をできるかぎり群れで飼育することで、その自然な生態や行動をご覧いただくとともに、本来の社会生活を営むことで動物福祉にも適った方法で展示することを心がけております。また、環境エンリッチメントという、動物園の動物たちが単調な環境や生活で病むことがないような工夫を凝らすことにも、つねに怠らず、努力を重ねています。ぜひJMCに足を運んで、霊長類たちの生活をご覧いただければ幸甚です。