心とは何か、それはいまだに簡単には答えられない生命科学の課題である。
心は人類未踏の高山のようなもので、その未知の分野を解明すべく、いくつかの登山路から登頂が試みられている。
人は必ず心をもっており、さまざまな不安に心が揺れていることが多い。
医師はそのような不安にどのように対処するか、それは変わることのない課題である。
「医師として生きる」より
人は、いや人のみでなくほとんどの生物は、生まれたときから死に向けた生を歩むことになる。それは、ほとんど意識されたものではない。
人においても、現代社会では幼児期、小児期、青年期において、死が意識にのぼることはほとんどない。
私は医師として長く生きてきたので、死に向けたさまざまな生のあり方に接してきた。
¥死とは何か、それは古来から哲学の重要課題であるが、正解はないのであろう。
結局、死に向けた生をどう生きるか、ある充実感をもって生きることができれば、もっとも幸せではなかろうか。
「死に向けた生」より