「百人百景」 京都市岡崎
「百人百景」京都市岡崎
村松 伸 + 京都・岡崎「百人百景」
実行委員会 編
発行 京都通信社
装丁 中曽根孝善
B5変判 96ページ
定価 1,600円+税
2013年4月15日 発行
ISBN 978-4-903473-70-3
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2012年3月4日、私たちは京都市岡崎地区で2人のプロカメラマンと、134人のアマチュアカメラマンが、各人27枚の写真を使い捨てカメラで撮影するイベントを開催した。このとき撮影した3,600枚を超えるまちの写真の一部を解説・解析しているのがこの本である。
京都の東側の岡崎の地ではかつて、武家の邸宅や仏殿や塔が建ち並んでいた。やがて荒廃して田畑となるが、19世紀末にふたたび勃興する。琵琶湖から運河が引かれ、平安神宮が造られ、動物園が開園した。明治の元勲や商人が名園を営み、やがて美術館や博物館が林立する異空間となった。
水、緑、公共建築、小さな祠、コミュニティ、町家、洒落たレストラン等々が拡がる現在のこの場所に、136人が小雨の降るなかでカメラを携えて半日を費やした。2キロ×1キロの限られた範囲であっても、その視線も、歩くルートも、人それぞれだった。江戸の富士山のような名所はないが、京都を取り巻く山々は136人を見守ってい る。由緒ある京の寺社仏閣も所狭しと並んでいる。
写っているのは、目に見えるものだけではない。春の兆し、記憶、虚無感、幸せ、そういう岡崎の日常と非日常の一切合切が、カメラですくい取られて写真となった。この3,600枚は、千年の東アジアの視線の末裔であるだけではない。これから訪れる千年後のサステナブルなまちの未来を構想する手立てともなる。地球環境と都市を研究する主催者の私は、27枚のすべての写真のなかで逆立ちしながら、そう考えた。
村松 伸 「千年の伝統の視線で、千年後の京都を構想する」から抜粋
