景観の生態史観 攪乱が再生する豊かな大地

WAKUWAKUときめきサイエンスシリーズ2

景観の生態史観 攪乱が再生する豊かな大地

森本幸裕 編

発行 京都通信社

装丁 高木美穂

A5判 224ページ

定価 2,000円+税

2012年7月1日 発行

ISBN 978-4-903473-51-2


人類の科学も技術も経済も年々「発展」しているはずなのに、なぜ生物多様性の危機は深化するばかりなのだろうか。

本書はその課題を克服する鍵をふたつ意図している。ひとつは、「景観」と「生態」を身近なレベルから地球レベルまで、人間の営みとともに統合すること。国交省と農水省と環境省を文化庁が統合するようなものとでもいおうか。カエルの生態の専門家でありながら水文学や農村計画や環境経済学の専門家であることは難しいが、これを総体として取り組もうというのが「景観生態学」の醍醐味である。

もうひとつは、既に縦割り行政や分化した専門学術に入り込みかけている大学院レベルの人だけでなく、いやむしろ社会の様々な分野で今後活躍する高校生に「景観生態学」の見方を身につけてもらうことだ。その見方とは、「景観」も「生態」もエネルギーや物質の流れや攪乱、つまりプロセスがあることが生きている証拠であること。

景観は、大陸移動のような超長期の大きな動きから、日々の気象やチョウの羽ばたきのような小さな動きまでが重層的に折り重なって形成されている。すばらしい景観も、絶滅危惧種も単に立ち入り禁止で「保護」することでは守れない。洪水や山火事などの攪乱は、短期的に見ると災いであっても、もうひとつ大きなレベルの空間と時間のスケールから見ると、次世代の再生を促す活力でもあるわけだ。

人間が生活するうえで避けられない開発と、生活の基盤でもある生物多様性の保全・再生のトレードオフに、どう折り合いをつけるのか。『景観の生態史観』でその手掛かりとなる原理を探り、多岐にわたる現場での解を考えるのに役だててほしい。

森本幸裕 「はじめに」から抜粋


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