日本のサル学のあした 霊長類研究という「人間学」の可能性

WAKUWAKUときめきサイエンスシリーズ3

日本のサル学のあした
霊長類研究という「人間学」の可能性

中川尚史+友永雅己+山極寿一 編

発行 京都通信社

装丁 高木美穂

A5判 240ページ

定価 2,000円+税

2012年12月13日 発行

ISBN 978-4-903473-52-9


日本のサル学が産声をあげたのは1948年。宮崎県幸島に生息する野生ニホンザルの社会学的研究からスタートした。生まれて60有余年、ひとりの人間でいえば還暦も過ぎ、老年期に差し掛かっているわけだが、幸い人間は世代を超えて知識の継承が可能な生きものである。サル学がここまで対象種や学問領域の幅を広げ、新しい調査研究機材を導入してこられたのも、その能力の賜物といえるだろう。

日本のサル学の黎明期を支えた諸先生方から受けた薫陶のひとつに、「専門家に向けた論文だけでなく、一般の方がたに向けた本を書く」というのがある。学問は専門家だけのものであってはならず、広く一般社会に還元されるべきものであるし、そうすることでサル学の裾野も広がり最終的には後継者の育成にもなるという、先見の明に長けた薫陶だったのだと思う。われわれはその著作によってサル学に誘われた。こうして後継者が育っていくことを体験していたから、それぞれが一般向けの書を通じてサル学の成果を発信してきたつもりだった。

しかしふり返ってみれば、これらの本には大きく欠けているところがあることに気づいた。いま、まさに研究の最前線にいる若手の研究者が自らの言葉で自らの研究、さらにはそこに至るまでの経緯や苦楽などを綴った本はとても少ないのだ。ましてやいまや総合科学となったサル学のさまざまな側面にふれることもできる若手中心の本に至っては皆無である。彼ら若手研究者のさらなる後継者を育てるためには、彼らによるサル学への誘いこそが必要なのではないかという結論に達し、本書を企画するに至った。

中川尚史、友永雅己、山極寿一 「序言」から抜粋


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