桜の教科書 サクラを美しくまもる人の智恵と技        購入ボタン

本の概要

「百人百景」京都岡崎 表紙

内容紹介

「桜の呼びかけに耳を傾けてほしい」から抜粋

桜は、日本人にとって特別な木です。桜の花は暖かな春のはじまりを教えてくれます。桜の花が咲くと、浮き立つような、うれしい気持ちになる人も多いでしょう。多くの地域で桜が咲く3月下旬から4月上旬は、学校の卒業式や入学式とも重なって、人生の節目をいろどります

人の手によって植えられた桜は、ふだんから目を配り、手入れをしないと弱ってしまいます。一年の大部分は、気にもとめられない桜。まちを歩いていると、かわいそうな桜をたくさん目にします。

桜のことをもっと知って、もっとたいせつにしてほしい。そして、「植えて、終わり」ではなく、「植えて、育てる」ことの重要性を世の中の人にもっと伝えたい。そんな思いで書いたのがこの本です。

この本は小学校高学年から桜の植樹、管理の実務者まで、幅ひろい読者層を対象にしています。桜を理解するうえで必要なことは、むずかしいと思われていることも、わかりやすく、ていねいに説明することを心がけました。

著者 2014年秋 京都にて

著者、編者紹介

監修
森本幸裕 もりもと・ゆきひろ
京都学園大学バイオ環境学部教授、京都大学名誉教授

1948年、大阪に生まれる。京都大学農学部卒業。農学博士。京都造形芸術大学、大阪府立大学、京都大学大学院等で教授をへて、2012年より現職。日本景観生態学会、日本緑化工学会、国際景観生態工学学会連合で会長を歴任。編著書に、『景観の生態史観──攪乱が再生する豊かな大地』、『最新環境緑化工学』などがある。

著者
今西純一 いまにし・じゅんいち
京都大学大学院地球環境学堂 助教

1975年、京都市に生まれる。京都大学農学部卒業、カリフォルニア大学バークレー校環境デザイン学部修士課程、京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了後、博士(農学)を取得。2004年より現職。日本緑化工学会理事、日本造園学会関西支部事務局などを務める。著書に『平成20~22年度吉野山サクラ調査報告書』(編著)、『環境デザイン学──ランドスケープの保全と創造』(共著)などがある。

著者
山中勝次 やまなか・かつじ
京都菌類研究所 所長

1942年に京都市に生まれる。京都大学農学部卒業。京都大学大学院農学研究科博士後期課程単位修得修了。奈良県林業試験場総括研究員、ホクト(株)きのこ総合研究所所長(専務取締役兼務)をへて、1999年より現職。日本きのこ学会会長。日本菌学会理事。国際きのこ生物学・きのこ生産物学会副会長。国際きのこ学会評議員を務める。著書に『キノコ・ワールド最前線』、『活きている文化遺産 デルゲパルカン』、『カラー版きのこ生育診断 ヒラタケ・エノキタケ扁』などがある。

著者挨拶

あとがき

春が近づくと、桜の花を待ち遠しく思います。陽気とともに虫たちが活発に動き出し、外を歩く人の声も心なしか明るく聞こえます。タンポポやホトケノザ、ハコベ、タネツケバナなど野の花が咲き、木々の芽から新しい葉が出ると、新たな1年がいよいよはじまったことを実感します。私にとっては、お正月よりも桜の花を見ることのほうが、1年のはじまりを感じるためにたいせつです。

桜へのまなざしが大きく変わったのは、樹木の健康診断についての研究をはじめてからです。木が目に入ると、その木はどんな健康状態にあるのか、どういう理由でそうなっているのかを反射的に考えるようになりました。まちを歩いているとかわいそうな木が目につきます。でも、たまに生き生きと育つ木に会えたときは、ほんとうにうれしくなります。

世の中には私と同じように桜が好きという人はたくさんいます。しかし、桜のことを学ぶ機会は学校でもほとんどありません。桜についての知識が不足しているために、桜にとっても人にとっても不幸な結果になっていることをよく目にします。それで今回、桜を愛で、植え、見守り、育てるために必要なことをまとめた教科書を書きました。

本書は桜の入門書という位置づけですが、記念植樹で苗木を植える子どもにも、保全の実務にたずさわる大人にも役に立つ本にしたい、桜について知ってほしいことはすべて入れたいと、よくばりな内容になっています。本を一とおり読んで、どこになにが書いてあるのかを頭に入れたあと、じっさいに桜とまわりの環境をよく観察し、興味をもった部分について本書を読み直すようにするとよいでしょう。本書を読んでいただいたみなさんにも、いつの間にか桜の声が聞こえるようになっていたとしたら。それは著者としてこの上ない喜びです。

目次

  • 桜のある風景

    庭の桜/並木の桜/山の桜/植樹の桜/物語のある桜

    はじめに●桜の呼びかけに耳を傾けてほしい

  • 桜とともに生きる

    花見──春のおとずれを知らせる桜/桜にあつまる生きものたち──桜は生きものたちの暮らしの場/2本の桜をくらべてみよう──笑っている? 泣いている? 桜の声を聞いてみよう/2本の桜はなぜ違う?──光・水・土・風……まわりを見ると桜のことが見えてきます

    コラム●美しい風景としての桜〈森本幸裕〉

  • 桜を知る

    サクラ属──それぞれの特徴を知ろう/桜の種類の見分け方──人の顔や性格が違うように、桜にも種や品種の個性があります/野生種──地域に根ざす桜/栽培品種(園芸品種)──人の手で美しさをつなぐ桜/桜の一年──花を咲かせ、実をつけようと一年をとおして変化しています