京都大学医学部 内科学第二講座
百十五年の歴史と伝統

表紙
  • 京都大学医学部 内科学第二講座同門会 編
  • 発行 京都通信社
  • B5判 140ページ
  • 定価 2,500円+税
  • 2019年7月8日 発行
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はじめに

京都大学医学部内科学第二講座は、1901年(明治34年)、中西亀太郎初代教授の就任とともに始まり、1995年大学院重点化によって臨床病態医科学講座(主任中尾一和教授)と改称された。さらに2002年以降、内科学講座の再編とともに、それぞれ専門内科に別れ、かなり多くの人が内分泌代謝学講座、現在は糖尿病・内分泌・栄養内科学(主任 稲垣暢也教授)講座に所属することとなった。従って内科学第二講座は、ほぼ20世紀とともに歩んで、発展的に解消した教室であると言ってよいであろう。
20世紀は人間の活動も、医学も大きく変わった世紀であった。疾患で言えば前半は感染症、後半は非感染性疾患が中心であったし、医学そのものは研究も臨床も、特に20世紀後半に爆発的に進歩した。内科学から、検査医学、核医学、心療内科学、リハビリテーション医学、臨床疫学など、いくつかの分野が独立したし、内科学そのものも消化器、呼吸器、循環器、内分泌代謝、神経、免疫など、次第に分科していった。しかし他方では、特に高齢化とともに患者を総合的に診断し、治療を選択する総合医の必要性も高まっている。そして総合医は、地域医療の分野のみでなく、病院内でも求められる時代となってきている。
そうした医学の流れの中で、京都大学の内科学第二講座の百十五年の歴史を振り返ってみることには、大きな意義があるといえよう。というのも第二講座は、内科学教室の中でも、最も広い分野の専門家を抱えた教室であったからである。歴代教授の専門が、感染症、消化器、血液、内分泌代謝、免疫と変わったこともあって、常に教室内に教授の専門分野と異なるグループが存在した。そのことは臨床研究を鋭角的に進めるのには有利でなかったかもしれないが、他方では他分野へ関心を持ち続ける視野の広い医師を育成する上には、大いに役だったと考えられる。というのも、教室内の症例検討会や研究発表会を通して、自然に異分野の知識を獲得することができたからである。
分科と総合、それは内科学が抱え続けねばならない宿命的な課題であって、簡単な解がないことは明らかである。しかしまた、常に問い続けねばならない重要な問題でもある。京都大学医学部内科学第二講座の歴史を通して、この医学の不変の課題について少しでも理解していただければ幸いである。
最後に座談会の開催を始め、本書のとりまとめに尽力された西谷 裕、中尾一和両氏に感謝したい。

平成31年4月吉日
井村 裕夫 (昭和29年卒 京都大学名誉教授/京都大学 元総長/日本学士院長)

  
    

目次

はじめに

第1章 《座談会》 京都大学医学部内科学第二講座の歴史と内科学の針路

井村裕夫/西谷 裕/中尾一和/伊藤 裕/稲垣暢也/岩井一宏

  • 第109回日本内科学会講演会 会頭講演「内科学の使命と挑戦」 (再録)
    中尾 一和

第2章 歴代教授の紹介

  • 中西亀太郎教授
  • 松尾 巌教授
  • 菊池武彦教授
  • 三宅 儀教授
  • 深瀬政市教授
  • 井村裕夫教授
  • 中尾一和教授

第3章 研究室(研究班)の紹介

  • 内分泌班(神経内分泌/甲状腺/副腎/骨代謝)
  • 肥満・分子医学グループ
  • 高血圧再生グループ
  • 糖尿病グループ
  • 神経グループ
  • 腎臓グループ
  • 免疫グループ
  • 肝臓班
  • 血液班
  • 心臓グループ
  • 同位元素診療部
  • 呼吸器班 (座談会 参照)

第4章 同門会会員 所感 (53名)

  • 編集後記
    西谷 裕/中尾一和