社会と調査
京都通信社の本

社会と調査 第18号
特集 パラデータの活用に向けて

表紙
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特集紹介

 調査データを取得するプロセスのデータのことをパラデータ(paradata)と呼ぶ。欧米では,このパラデータを利用して調査を改善するための研究が盛んになってきたが,日本でもパラデータを活用できないのだろうか。

 本特集では,パラデータの命名者であるミック・P・クーパー氏に,パラデータの概念の誕生から今日までの発展についてご寄稿頂いた。その上でパラデータに以前から関心をお持ちだった識者の方々に,日本の調査でのパラデータの活用を述べて頂いた。

 前田忠彦氏は,調査員がデータを取得するプロセスを記録したデータである訪問記録の分析例を示す。保田時男氏は,自らの分析経験を振り返りつつ,訪問記録分析の意義を自省的に検証する。城川美佳氏は,電話調査におけるパラデータ分析の経験からその利用の意義を述べる。大隅昇他4名の諸氏は,ウェブ調査におけるパラデータの活用方法と課題を論じる。

 冒頭の松本論文では,これら5本の論文の理解を促せるように,パラデータの基本概念の概説と日本国内の研究状況についての展望を示している。できれば前から順に6本全ての特集論文をお読み頂き,パラデータの活用についてご考察頂きたい。

松本 渉「特集紹介」から抜粋

目次

巻頭言

日本の統計学的社会調査のはじまり
帝京大学大学院公衆衛生学研究科 教授 山岡和枝

特集 パラデータの活用に向けて

論文1. データ取得プロセスの分析から調査を改善する
松本 渉
論文2. パラデータ概念の誕生と普及
ミック・P・クーパー,松本 渉訳
論文3. 訪問調査における調査員訪問記録の活用について
——事例紹介として
前田忠彦
論文4. なぜ調査員の訪問記録を分析するのか
保田時男
論文5. 電話調査におけるパラデータの活用
城川美佳
論文6. ウェブ調査におけるパラデータの有効利用と今後の課題
大隅 昇・林 文・矢口博之・蓑原勝史

調査の現場から

シングルフレームによる固定電話・携帯電話併用式RDD調査
槙 純子

調査実習の事例報告

地理学的な観点からみた魚津市の調査
大西宏治
先進産業都市の変容を追いかけて
——2014・2015年の豊田調査実習先
丹辺宣彦

働く社会調査士

回答者を意識した調査票作成の重要性
川窪耕平
情報収集と分析・立案活動の活きた実践
福田洋平

Commentary

クロス集計表の視覚化
——Rを利用したグラフの紹介
中野康人

Column 調査の達人

S.スタウファー
——『アメリカ兵』と相対的剥奪
石田 淳
増田光吉
安達正嗣

Column 世界の調査/日本の調査

世界価値観調査
山﨑聖子
East Asian Social Survey(東アジア社会調査)
岩井紀子

Column 社会調査のあれこれ

「全国家族調査 NFRI」プロジェクトの経緯
渡辺秀樹
私の社会調査事始
片瀬一男

私の3冊

フランスの社会学者たちの仕事
宮島 喬

著者が語る社会調査テキスト

『社会調査ハンドブック』『社会調査入門——調査を生かす12章』
飽戸 弘

書評

NHK放送文化研究所編『現代日本人の意識構造(第八版)』
田辺俊介
荒牧草平著『学歴の階層差はなぜ生まれるか』
吉田 崇
大谷信介・山下祐介・笹森秀雄編著『グローバル化時代の日本都市理論——鈴木栄太郎「都市社会学原理」を読み直す』
町村敬志
吉川 徹著『現代日本の「社会の心」——計量社会意識論』
稲増一憲

2016年度 社会調査協会賞 受賞の言葉

社会調査協会賞について
表彰・助成委員長 原 純輔
優秀研究活動賞
筒井淳也
『社会と調査』賞
藤原 翔
片野洋平

執筆者紹介

山岡和枝
社会調査協会 理事、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 教授
松本 渉
関西大学総合情報学部 准教授
ミック・P・クーパー
ミシガン大学調査研究センター 研究教授
前田忠彦
統計数理研究所データ科学研究系 准教授
保田時男
関西大学社会学部 教授
城川美佳
富山大学大学院医学薬学研究部(医学)公衆衛生学講座 助教
大隅 昇
統計数理研究所 名誉教授
林 文
東洋英和女学院大学人間科学部 名誉教授
矢口博之
東京電機大学理工学部 准教授
蓑原勝史
株式会社シー・エス・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長
槙 純子
株式会社日経リサーチ ソリューション本部 世論調査部
大西宏治
富山大学人文学部 准教授
丹辺宣彦
名古屋大学大学院環境学研究科 教授
川窪耕平
株式会社日経リサーチ
福田洋平
株式会社日立ドキュメントソリューションズ勤務(原稿執筆時)
中野康人
関西学院大学社会学部 教授
石田 淳
大阪経済大学人間科学部 准教授
安達正嗣
高崎健康福祉大学健康福祉学部 教授
山﨑聖子
世界価値観調査 日本代表
岩井紀子
大阪商業大学総合経営学部 教授、JGSS研究センター センター長
渡辺秀樹
帝京大学文学部 教授
片瀬一男
東北学院大学教養学部 教授
宮島 喬
お茶の水女子大学 名誉教授
飽戸 弘
社会調査協会 前理事長、東京大学 名誉教授
田辺俊介
早稲田大学大学院 准教授
吉田 崇
静岡大学人文社会科学部 准教授
町村敬志
一橋大学大学院社会学研究科 教授
稲増一憲
関西学院大学社会学部 准教授
原 純輔
東北大学 名誉教授
筒井淳也
立命館大学産業社会学部 教授
藤原 翔
東京大学社会科学研究所 准教授
片野洋平
鳥取大学農学部 助教